【推移】
21日(月):
週末のNY株式は続落。もっとも64日ぶりに1%以上の下落となった木曜よりは下落幅を縮小した。バノン首席戦略官兼大統領上級顧問の更迭は当初株高要因と解釈されたが徐々にマイナス要因化した印象。「トランプ政権発足時に抱いた投資家の期待すべてに疑問が深まり、株価修正が起こった」との声も聞こえる。
S&P500は大統領選以降、13.4%上昇した水準。直近2週間で2.1%値下がりした。50日移動平均を1%ほど下り200日移動平均に接近。NYダウは0.8%安で2週続落。S&Pは0.6%で2週続落。NASDAQは0.6%下落で4週続落(累計2.7%下落)。「株式相場は例年低調とされる月を迎えており、今後数週間はさらなる試練に直面する」という悲観論も結構首肯できる状況。債券市場はほぼ横ばい。
週明けのアメリカは本土では38年ぶりとなる皆既日食の予定。西海岸オレゴン州から東海岸サウスカロライナ州まで14州を横断するという。
本土を横断する皆既日食は99年ぶり。100年に1回の日だけに渋滞だけでなく様々な市場的試練があるのかも知れない。月が太陽を完全に隠すことで、太陽光発電の出力が一時的に減少。カリフォルニア州で太陽発電の出力が561万キロワット失われるとの試算もある。
東京は先行き不透明感から上値の重い展開。日経平均は週間では約259円の下落。週足では2週連続で陰線。週間ベースでは、日経平均株価は1.3%安、5週続落(累計3.2%下落)。TOIXは1.2%安で2週続落(同2.1%下落)。東証マザーズ指数は0.6%高と4週ぶりの反発。日経ジャスダック平均は0.8%高で3週ぶりの反発。東証2部指数は0.5%高で2週続伸。「今週は前半軟調、後半堅調の展開」という見方もあるが逆の動きも想定されようか。
週末の再下放れはダブルでショック。3月~4月相場に似た状況となってきた」という声もある。21日から米韓合同軍事演習がスタート。
25日は北朝鮮の「先軍節」。北朝鮮リスクが再び意識されると思わぬ先物売りの可能性もある。もっとも空売り比率は42.2%。もう少し増加して45%台に乗れば株価反転水準。そろそろ限界値だ。日経平均は16日から4日続落だがそのうち3日は値上がり銘柄の方が多い。指数寄与度の高い銘柄は下落だが「軒並み売られている」という状況ではないということだ。
日経平均のチャートは25日線(19899円)を割り込んだ後も下落継続。しかも先週金曜に25日線と75日線(19923円)がデッドクロス。26週線(19582円)も下回ったままだ。一方、TOPIXは25日線(1621P)を割り込んだものの、まだ26週線(1574P)は割り込んでいない。ここもチグハグさの一つ。「TOPIXの罫線が崩れなければまだ期待感」という見方もできよう。
日経平均株価は77円安の19393円と4日続落。5月1日以来およそ3カ月半ぶりの安値水準となった。トランプ政権の政策遂行や米韓両軍合同軍事演習開始などからリスク許容度は後退。先物中心の下落となり指数寄与度の高い銘柄が下落。証券・銀行・生保などのセクターも一段安。
一方で円高や外部要因の影響を受けにくい中小型株は比較的堅調な展開だった。TOPIXは4日続落だったが規模別では「中型」と「小型」が上昇。値上がり銘柄数は1038と値下がりの852を上回った。
東証1部の売買代金は1兆7534億円と6月26日以来約2カ月ぶりの低水準。東ガス、関西電、キリンHD、花王、NTT、国際石開帝石、 住友鉱、三菱ケミHDが上昇。JT、クボタ、三菱重、第一三共、塩野義、ファストリテ、野村、三菱UFJが下落。
22日(火):
週明けのNYダウは3日ぶりの反発。政治の先行き不透明感や北朝鮮など地政学リスクへの警戒感は根強く上値は重い。
一方で短期的リバウンド狙いがやや優勢との印象。債務上限の引き上げ問題やアフガニスタン新戦略など不透明材料は満載。25日のワイオミング州ジャクソンホールでのFRBイエレン議長の講演を見極めたいといういつもの待ち状態コメントも散見される。
シカゴ連銀全米活動指数は市場予想に反してマイナスで着地。ナスダック総合株価指数は3日続落。おりしも「ヒンデンブルグ・オーメン」との警戒サインが点滅。
ヒンデンブルグは過去1年の高値・安値の更新銘柄数や移動平均線など複数の条件から算出される。短期間に条件を満たす回数が多いほど相場急落の強いシグナル。
S&P500は前週半ばまでの6営業日のうち5日間で条件を満たしたという。「この頻度で起こったのは過去に1990年、99~2000年、07年だけだった」という声も聞かれる。
S&P500とNYダウ、ナスダック総合株価指数、ラッセル2000の4大指数では過去半年で条件を満たしたのは74回。07年11月に次ぐ2番目の多さだという。罫線という紙芝居が市場の主役になるかどうかという結構興味深い局面。
日経平均は9円安と小幅に今年初の5日続落。TOPIXは5日ぶりに反発。「北朝鮮もジャクソンホールもメインではなく、トランプ大統領の存在そのものがメイン」という声も聞こえる。そしてファーストリテの下落が225に与える影響の多さも目立った。同社株は年初来右肩下がりで連日の年初来安値更新。最高値から半値以下となった。
最高値を記録したのは2015 年7月30日。株価は61930円。約2年後の2017年8月22日の終値は30910円。この指数の歪みが体感温度を下げている状態は否めない。日経平均株価は9円安の19383円と5日続落。5日続落は2016年5月6日までの6日続落以来。株価水準は3ヶ月ぶりの安値水準に沈んだ。もっとも前場は13円高と一時プラスの場面もあった。日中値幅は75円と狭いレンジで方向感の薄い展開。
東証1部の売買代金は1兆7142億円と今年5番目の少なさ。東証1部の値上がり銘柄数は966、値上がり銘柄は919と値上がり銘柄の方が多かった。TOPIXは反発しており、実質は4日続落までだった印象。富士通、キーエンス、JFE、住友鉱、新日鉄住金、SMC、いすゞが上昇。東ガス、大ガス、味の素、JR東日本、JR西日 本、ヤマトHD、NTTドコモ、KDDIが下落。
23日(水):
NYダウは196ドル高の21899ドルと続伸。上昇幅は4月25日以来ほぼ4カ月ぶりの大きさだった。上昇幅は一時200ドルを超える場面もあった。「ハイテク株に値ごろ感から見直し買い。税制改革への期待が再び広がった」との解釈。「トランプ大統領の上級顧問らや共和党議員らが個人と企業の税負担を軽減する財源を確保する手段に関して共通の見解に達した」。この報道が流れを決めた格好。
いつの間にか北朝鮮問題や トランプ政権の先行きへの不透明感を悪化させる材料は一服。
普段は見向きもされないリッチモンド連銀製造業指数が予想を上回ったことも好材料視。
原油先物価格は反発。金はドル高を背景に反落。債券市場は株高を背景に朝から軟調な推移。結局は「解釈」の問題だったということになる。
今月1日以降の降雨は21日連続で止まった。1977年に記録した観測史上最長の「22日連続」に次ぐ歴代2位の記録となった。久々に朝から快晴の日の株価はプラス展開。天気と株価の因果関係はないが、以前は晴れの日の株高アノマリーが囁かれたこともあった。
サイコロは依然として2勝10敗。過去12日で2回だけ上昇、過去10日で1回だけ上昇。そんな頻度で訪れる上昇は「お久しぶり」という印象。2勝10敗となるのは2016年1月21日以来。2012年末の第2次安倍晋三政権の発足以降では3回目だという。後場に下値を試したものの19400円割れ手前で下げ止まりだった水曜。
一応日経平均の6日続落は免れた格好。
「ドラギ・イエレン両氏が出席するジャクソンホール会合での発言が欧米株の急落を招くとは考えにくい」。そんな声も聞こえる。それにしても200ドル近いNYダウの急上昇を受けた割には尻すぼみ。寄りが高値でじり貧の展開は「典型的な寄り天」という声が聞こえる。
前日比50円高はこの間5日間の下落幅170円に対して13.5%の戻り。「戻りと呼べるほど力強いものではない。中途半端な反発」だ。それでもサイコロは3勝9敗で25%と上昇したのは皮肉だろうか。裁定買い残は2週連続で減少。前週比699億円減の1兆5170億円は4月21日時点以来ほぼ4カ月ぶりの水準。売り残は4週連続で増加。前週比637億円増の3410億円。
日経平均株価は50円高の19434円と6営日ぶりに反発。「トランプ米大統領がメキシコ国境との壁建設に前向きな発言をしたと伝わり、午後は米政権運営の迷走を懸念した売りで伸び悩んだ」との解釈。26週移動平均(19584円)を超えることはできなかった。前日までの5日間で369円下落していたが反発力は鈍かった。TOPIXとJPX日経インデックス400は小幅続伸。
東証1部の売買代金は概算で1兆9037億円と3日連続で活況の節目となる2兆円を下回った。3日連続は7月21~25日以来ほぼ1カ月ぶり。ファーストリ、ソフトバンク、東エレク、キーエンス、ソニー、住友鉱、ニトリHDは上昇。三菱UFJ、 アインHD、資生堂、安川電、NTTデータは下落。
24日(木):
NY株式市場は反落。「メキシコ国境沿いに壁を建設するための予算を確保できなければ政府機関閉鎖も辞さない」。このトランプ大統領のコメントを嫌気したとの解釈。ライアン下院議長は「閉鎖は必要ない」とコメントし下落幅は縮小した。10月半ばまでに引き上げる必要がある連邦債務上限引き上げの問題がクローズアップされた格好。それにしても市場マインドの低いコメント翻弄されたという印象だ。
VIX(恐怖)指数は4日ぶりに上昇した。3市場の売買高は約50億株と低調。米国債は安全資産としての側面から買われ10年国債利回りは前日の2.22%から2.17%に低下。トランプ発言を受けてドルは下落。「カナダ、メキシコによるNAFTA再交渉では深い溝が埋まらず、同協定を破棄する可能性がある」。このトランプコメントも効いた格好。
日経平均株価は80円安の19353円と反落。5月1日以来、約3カ月半ぶりの安値で取引を終了。小型株には買いが続き2部指数やマザーズ指数は3日続伸。ホンダ、出光、ルック、カメイが上昇。任天堂、トヨタ、キーエンスが下落。
25日(金):
NY株式市場は続落。前日と市場心理は一転。「政局を巡る不透明感が重荷となった」との解釈。加えてジャクソンホールの年次経済シンポジウムでのイエレンFRB議長とドラギECB総裁の講演待ち。「どちらも新たなガイダンスを示さない見通し」を気にするという陳腐な発想が相変わらず市場心理を左右している。
債券市場も同様の呪縛に囚われた格好。トランプ大統領は「メキシコ国境沿いに壁を建設するための予算を確保できなければ政府機関閉鎖も辞さない」と発言。
今度は債務上限引き上げ問題を巡る懸念が高まった。10月初旬に償還を迎える財務省証券の利回りは上昇。「早ければ10月2日に政府は支払い不能に陥る」との観測も出始めたが真に受ける向きは少ない。為替市場もジャクソンホールの話題だけ。市場は発想の貧困を競っている様相。
日経平均株価は98円高の19452円と反発。円高進行一服を好感した格好。東証一部の売買代金は1兆7138億円と低水準。4月17日以来4か月ぶりだ。
東証一部の値上がり銘柄数は1172で全体の、58パーセント。日経平均は週間で17円下落。6週続落での下落幅は666円。6週続落は2014年2月以来3年7カ月ぶり。コマツ、ユニー、ヤマト、三菱ケミ、東レが上昇。キーエンス、安川電、カルビー、アサヒが下落。
(2) 欧米動向
マーケットが気にしたジャクソンホール。
所詮北米の晩夏の金融マフィアの避暑地の謝肉祭と思えないところが市場の貧しさ。
今は経済シンポジウムだが1978年にスタートした時は農業問題を議論する場。
1982年から今の「ジャクソン・レイク・ロッジ」で開かれている。
興味深いのは逸話。
カンザスシティ連銀が選んだジャクソンホールは渓流釣りで有名な場所。
当時のFRB議長ボルカ─氏は大のフライフィッシング好き。
だからこの会議に呼ぶためにあえてカンザスシティ連銀はこの場所を選んだという。
所詮その程度の動機でスタートした集まりをいちいち材料視する市場も変な感覚だ。
東京ではこのあたりの感覚が麻痺というか、去勢されているので何でもありがたがる傾向がある。
この舶来主義からの脱却は夏目漱石でさえ悩んだところだが、もういい加減にいいだろう。
米国は軍事増強に傾斜というのが最近の観測。
軍事介入に消極的とされる最側近のバノン首席戦略官の解任。
そしてアフガニスタンでのテロ戦強化。
昨日のNYで国防関連大手のボーイングが2%上昇。
一方、金融大手のJPモルガン・チェースは1%高。
「株式市場の動きからは、軍事に軸足を移す政権の質の変化がうかがえる」と指摘。
一方で大統領の権限で力を発揮できる外交・安保に重心が移ってきた」という声がある。
米大統領選挙から8月21日までに一貫して上昇しているのは、軍事関連のボーイング。
昨年11月9日から国防予算を増額した5月22日までは27%高。
5月22日から8月22日までは31%高。
ノースロップ・グラマンは3%高から9%高。
「新たなトランプ相場は軍事関連や人手不足を受けたロボティクスなどの省力化銘柄」。
この流れは止まらないのかも知れない。
↓
大統領選から5月22日まで 5月23日以降
◎軍事・防衛関連
ボーイング 26.59% 30.53%
ロッキード・マーチン 9.30% 10.02%
ノースロップ・グラマン 2.95% 9.37%
ゼネラル・ダイナミクス 22.00% 1.76%
レイセオン 9.87% 11.19%
三菱重(7011) 7.53% ▲5.99%
日立(6501) 32.53% 7.05%
◎インフラ投資
キャタピラー 12.16% 13.23%
バルカン・マテリアルズ ▲3.51% ▲9.27%
コマツ(6301) 23.26% 5.49%
日立建機(6305) 26.25% 11.74%
三菱マ(5711) 11.13% 18.72%
◎金融
JPモルガン・チェース 15.63% 8.10%
三菱UFJ(8306) 38.73% ▲3.95%
◎トランプ氏が名指し批判
アマゾン・ドット・コム 25.75% ▲0.39%
トヨタ(7203) 8.84% 2.35%
◎トランプ氏と関係良好
ソフトバンク(9984) 41.71% 1.73%
(3)アジア・新興国動向
東証2部指数は前週末比38.62ポイント高の6624.33ポイントと5日続伸。値上がり銘柄数は261、値下がり銘柄数は156となった。
個別では富士通コンポーネント<6719>がストップ高。アジア航測<9233>、杉村倉庫<9307>は一時ストップ高と値を飛ばした。まんだらけ<2652>、黒谷<3168>、コーセーアールイー<3246>、情報企画<3712>、セック<3741>など25銘柄は年初来高値を更新。図研エルミック<4770>、安川情報システム<2354>、青山財産ネットワークス<8929>、スリープログループ<2375>、ぷらっとホーム<6836>は値上がり率上位に買われた。
一方、ファステップス<2338>、東邦金属<5781>、ツインバード工業<6897>、エンビプロ・ホールディングス<5698>、不二サッシ<5940>は値下がり率上位に売られた。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
25日(金):消費者物価、企業向けサービス価格指数、米耐久財受注、独IFO景況感
27日(日):茨城県知事選投開票
28日(月):中西部太平洋まぐろ類委員会、英国・フィリピン休場
29日(火):有効求人倍率、家計調査、米CB消費者信頼感、ケース・シラー住宅価格指数
30日(水):商業動態統計、英国メイ首相来日、米ADP雇用レポート、4~6月GDP統計改定値
31日(木):鉱工業生産、米シカゴ購買部協会景気指数、中国製造業PMI
1日(金):法人企業統計、民主党代表選、米雇用統計、ISM製造業景況感、新車販売台数
【8月】
27日(日)土星順行開始
28日(月)テニス全米オープン、ロンドンはサマーバンクホリデーで休場
29日(火)変化日
31日(木)サッカーW杯アジサ最終予選(日本VS豪州)
【9月】
1日(金)厚生年金保険料引き上げ、欧州最大の家電見本市「IFA」(ベルリン)、変化日
4日(月)レーバーデーでNY休場
5日(火)サッカーW杯アジア最終予選サウジVS日本
6日(水〉満月、水星順行開始、米ベージュブック
7日(木)ECB理事会、変化日
8日(金〉メジャーSQ
12日(火)国連総会、北米最大の携帯見本市「モバイルワールドコングレス」(サンフランシスコ)
夏季ダヴォス会議(大連)、フランクフルト国際自動車ショー
13日(水)変化日
15日(金)米メジャーSQ
18日(月)敬老の日で東京休場、IAEA総会(ウィーン)
19日(火)米FOMC(~19日)
20日(水)日銀金融政策決定会合(~21日)、変化日、新月
21日(木)東京ゲームショー(幕張)
25日(月)茨城県知事任期満了
29日(金)変化日
8月第3週の海外投資家は4週連続で売り越し。
売越額は2057億円。
前週は2746億円の売り越し。
個人は2週連続の買い越しで買越額は1160億円。
3月第4週以来約5カ月ぶりの大きさとなった。
前週は443億円の買い越し。
個人投資家動向を信用と現金に分けたデータでは、信用が809億円、現金が350億円の買い越し。
現金取引の買い越しは3月最終週以来のこと。
「4月以降で、つまり今期初めて買いに動いた」との指摘。
多少の変化と見る向きは多いが餌食にならず釣果を求めて欲しいところ。
信託銀行は2週連続で買い越し。
買越額は464億円。
先物動向で海外投資家は5週連続で売り越し。
売越額は3289億円。
前週は1744億円の売り越し。
現物株と合わせると5346億円の売り越しになる。
証券会社の自己売買部門は7週連続の買い越し。
買越額は3504億円と前週の1055億円から増加。
昨年12月第1週以来の大きさだった。
個人は2週連続で売り越し。