<兜町カタリスト>
「汗をかく価値」
米国株式市場は下落。
薬品価格の大幅値上げを嫌気されたヘルスケア関連の下落。
また金価格の下落を背景とした素材セクターの下落。
そして原油安を嫌気したとの解釈。
前月は9年ぶりの高水準だった米中古住宅販売件数が市場予想以上に減少したことも悪材料。
引け際に下落幅を拡大したが、今週は先物決済のSQ週。
このあたありの思惑が多少働いたのかも知れない。
S&P500は7月8日以降、終値ベースで上下1%以内の値動き。
FRBの利上げ動向を注視していることの裏返しなのだろう。
市場が織り込む9月の利上げ確率は18%。
前週末時点の12%から上昇した。
12月の利上げ確率は50%を若干上回る水準。
「過去1週間のFRB当局者発言からはFRBがいつでも利上げできるとの印象。
イエレン議長が26日にそうしたメッセージを繰り返すのか、それとも撤回するのかが注目」との声が聞かれる。
大統領選調査予測。
現時点で米ヒラリー・クリントン氏がトランプ氏を95%の確率で破り当選するとの見通し。
マーケット的には悪くない予測だろう。
昨日の売買代金1兆6000億円。
日経平均の日中値幅は約100円、後場はわずか34円だった。
「まんじゅう怖い」ならぬ「ジャクソンホール怖い」で固まった展開。
解きほぐすにはそれなりの好材料が必要になるのだろう。
ただ利上げ=株安という安易な図式は実は時間軸を数か月眺めにすれば過去該当していないのも事実。
今回だってQE3の終了で米国の株価は上昇。
そして昨年の利上げ以降、半年ほどで3指数揃って史上最高値を更新した。
マーケットの常識は世間の非常識みたいなもの。
蟷螂の斧みたいな観測に見えてくるのも致しかたなかろう。
何かを待って閑散かつ動意に乏しい展開はいつもの事と割り切った方が良い。
シカゴ225先物終値は大証日中比変わらずの16540円。
大証夜間取引終値は20円高の16560円。
NYが下げても東京市場は歯牙にもかけていない様相。
空売り比率はまだ42%台。
しかし先週の裁定買い残はわずか611億円とはいえ3週ぶりに増加し5345億円。
日経朝刊では「TOPIX先物の残高が2013年1月以来の低水準。
中長期投資家による日本株先高感の後退」との解釈。
むしろマイナス金利の影響での残高減少と見たい。
減ったものはいつかは増えるのがゼロサム世界のマーケットの定理でもある。
騰落レシオは85%で過熱感まったくなし。
PER14倍割れ。
しかも25日移動平均16578円が下をサポートしてくれている。
8月4日に10.1まで低下したRCIは17日に81まで上昇して昨日36。
16697円を越えれば上値を追えると見たい。
昨年の米利上げで訪れたのはトライフェクタの3指数高値更新。
本来ならばTOPIXにも来なければならない。
それを阻害しているのはマイナス金利の導入だったという気もする。
過去3回の米利上げ局面ではTOPIXは利上げ開始直後に1カ月程度調整。
高値から5~13%下落した。
ただ安値を付けた後は3回とも調整前高値を超え安値から10~69%上昇。
業種としては卸売・精密・証券がTOPIXをアウトパフォーム。
米利上げ開始は世界経済の回復に向けた第一歩。
日本株は一段と上昇基調を高める可能性がある。
具体的に見てみると・・・。
(1)1994年2月~95年2月
94年2月4日以降1年で7回の利上げ。
FFレートは3%→6%まで引き上げ。
TOPIXは2月1日の1643ポイント→2月17日1553ポイントまで約5%下落。
その後3月13日までの3カ月で約10%上昇し「倍返し」となった。
TOPIXを上回ったセクターは機械・紙パ・繊維・精密・証券・電機・ゴム・海運・輸送用機器
水産・鉄鋼・鉱業・化学・卸売・非鉄・不動産・ガラス・その他製品。
(2)1999年6月~2000年5月
1999年6月30日以降11カ月で6回の利上げ。
FFレートは4.75%→6.5%まで引き上げ。
TOPIXは利上げ3週間後の7月19日まで上昇後8月11日まで約6%下落。
その後半年で24%上昇し「4倍返し」となった。
TOPIXを上回ったセクターは情報通信・卸売・サービス・証券・電機・小売・精密。
(3)2004年6月→06年6月
2004年6月30日以降約2年で17回の利上げ。
FFレートは1.0%→5.25%まで引き上げ。
TOPIXは利上げ前直前に約13%下落。
利上げ後は2年間で69%上昇し「5倍返し」となった。
鉄鋼・不動産・鉱業・非鉄・機械・卸売・銀行・保険・繊維・ガラス・倉庫・証券・
その他金融・石油・海運・建設・輸送用機器・精密。
日経スクランブルのコメントはPCデポの株価下落。
「中小型のスター銘柄の暗転劇から学ぶもの」となっている。
紹介されているのはベテランアナリストのコメント。
「みな業績という見た目の数字の成長を見て浮かれたんでしょう。
公表情報を丹念に調べていれば、今回のようなリスクは事前に分かっていた筈」。
「消費者や社会から受け入れられる持続可能なビジネスなのかを十分調べる作業を怠るべきではなかった」。
これが教訓。
別のアナリスト氏のコメント。
「数字の信ぴょう性を工場や店舗まで出かけて行って確かめるのはアナリストの基本。
財務データだけを見て非財務情報を軽視するとこうなる」。
非財務情報の分析は一段と重要性を増すということ。
公認会計士だって、石油会社の在庫調査を必ず行うもの。
短信だけで企業を分析するのには当然無理があろう。
だから「足」が必要になってくる。
汗をかいただけ儲からないかも知れない。
しかし汗をかいただけリスクからは遠くなると言えるだろう。
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中本パックス(7811)・・・動兆
3月に2部上場した中本パックスに注目する。
同社はグラビア印刷が中核。
ラミネート、コーティング事業も展開している。
食品包装、IT・工業材、医療関連が拡大基調。
テイクアウト用袋が中国で好調。
2次電池用部材に期待感。
(兜町カタリスト櫻井)