【推移】
16日(月):
週末のNYダウは185ドル安の17535ドルと3日ぶりの反落。S&P500、NASDQは続落した。週間ベースではNYダウが1.2%、S&P500が0.5%下落し3週続落。NASDAQは0.4%の下落で4週続落。週末の下落の背景は原油先物価格の下落。アメリカの石油掘削リグは318基となる09年10月以来の低水準となった。
週末の日経平均株価は5日ぶりの続落。今年のリズムの「SQまで安くSQ後反発」とは少し違ってきた。SQ値は16845円を一度も上回ることなかった。225先物の終値が16340円と500円以上の下の水準だからまさに「幻」。
東証が発表した5月第1週(2~6日)の投資部門別株式売買動向。外国人は2週連続で売り越し、売越額は3142億円。連休中の2営業日だったにも関わらずその前週の892億円を大きく上回った。個人は2週連続で買い越し、買越額は2616億円。信託銀行は3週ぶりに買い越し、買越額は578億円。
土曜の日経朝刊では「首相、消費増税先送り」の見出し。サミット後の正式表明に期待が出てきた。今年の最大の悪材料である来年4月の消費増税が延期されれば市場は歓迎する。金曜の夜に安倍晋三首相は日銀の黒田東彦総裁や米コロンビア大学ジェラルド・カーチス教授らとニューオータニで会食。伊勢志摩サミットの準備なのだろうが、変化の兆しと捉えてみたい。
先週の日経平均は週間で約305円の上昇。週足で3週ぶりに陽線となった。「4月の日銀緩和見送り以降の下げ基調には歯止めがかかった。4月8日の安値15471円を割り込むことなく切り返し。2月12日の15000円割れをボトムとした戻り基調は崩れていない」との声も聞かれる。
今週の課題は18日発表の1~3月GDP速報値。市場予想は実質0.3%増だがうるう年を考慮すればマイナスになる数字。GDPは消費増税を延期するかどうかの判断材料の一つ。良ければ増税、悪ければ増税延期。変形バージョンの前門の狼、後門の虎だろうか。もっとも消費増税は延期ならば株高、実施ならば株安のシナリオ。
日経平均株価は54円高の16466円と反発。クボタ、住友電が上昇。エーザイ、洋ゴムが下落。
17日(火):
週明けのNYダウは175ドル高の17710ドルと反発。バレル47ドル台まで上昇した原油先物が追い風になったとの解釈。個別ではここまで2年ぶりの安値圏に沈んでいたアップル株が上昇の立役者。著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイが1~3月期に初めてアップル株を約10億ドル保有していることを好感。アップルの上昇率は3.7%で今年3月1日の3.97%以来の大きさ。1銘柄でNYダウを22ドル押し上げた。全体の97.9%が通過した3月期決算。今期売上高は0.9%減収見通しだが経常利益は2.7%、純利益は14.1%増益の見通しは悪くない。
日経平均株価のPERは13.75倍でEPSは1197円と1200円まであと少し。昨年12月8日に1270円だったEPSは5月6日に1091円まで落ち込んだか意外と元気に戻ってきている。
日経平均株価は186円高の16652円と続伸。国際帝石、A&Dが上昇。KDDI、日製鋼が下落。
18日(水):
寄せては返す波のような展開となったNY市場。上げれば下がるという心理が横行しているのだろうか。月曜に上昇した火曜のNYダウは180ドル安の17529ドルと反落。S&P500もNASDAQも下落したが結局先週末の水準に戻しただけのことと考えてもよかろう。
4月の消費者物価指数(CPI)は前月比0.4%上昇。2013年2月以来3年2カ月ぶりの大きな伸びとなった。ガソリンと家賃の値上がりが全体水準を押し上げた形。1~3月GDPは前期比プラス0.4%、年率換算プラス1.7%で着地。想定より悪くなかった着地。
さて株価と消費税というところ。「三菱電機が月面探査機」とか「ソニー、好奇心持つAI」とか眩い活字。日本製のロケットが月に行き、人が気付かない「解」を探すAIが登場する。ソニーは2006年、15万台の販売実績があったAIBOから撤退。と開発中だったヒト型ロボット「QRIO(キュリオ)」も封印された。「ブーム再来でAIと親和性の高いロボットにソニーが再参入する期待も高まりそう」との声。「感動や好奇心を引き出せる商品にしていく。単に役に立つというだけの機能ではない何かだ」というコメントは楽しみである。
日経平均株価は8円安の16644円と3日ぶりの反落。TOPIXは2ポイント高の1338ポイントとマチマチ。三菱UFJ、ワイエイシイが上昇。スズキ、ネクシィーズが下落。
19日(木):
NYで材料視されたのは4月のFOMC議事録。「経済指標が第2四半期の成長加速を示し、インフレと雇用で前進が見られれば、6月の利上げが適切になる」との認識が意外感を持って受け止められた。6月の利上げ予想確率は前日の15%から34%に上昇。7月利上げの確率は50%を超えた。このためドルが上昇。ユーロは3週間超ぶりの安値となり、円は約3週間ぶりに110円台まで下落。「予想外にタカ派的。トーンの急転換は驚き」。あるいは「FRB内のハト派当局者も6月利上げの可能性を示唆しており、こうした発言内容に沿っている。変わり身の早さという点で、市場は不意を突かれた格好」と。「サミット前の東京市場へのささやか且つ洒落たプレゼント」という声も聞かれる。
消費増税をめぐる予測はどうも永田町の出来レースのようになってきた。一つは国会での党首討論。野党民進党の岡田代表は「消費増税は2年延期を」と要求。安部首相は「ご提案として承っておきたい」。みずから増税延期を言い出せば経済失政を突かれる可能性があるが、野党からの延期要求に従うという落とし所は見事だろう。条件的には軽減税率の導入撤回が結構重石だろうか。共産党への回答は「増税のイエスノーの影響は専門家に分析していただく」。この答えは既に出ているのだから、時間の経過とともに消費増税延期の機運は高まろう。公明党との首脳会談で消費増税延期の結論はなかったという。しかし直前に財務相、財務次官、財務官とミーティングを行っていたのも事実。
市場にとっては悪くない。TOPIXは前日まで3日続伸。体感温度は悪くない。ただ問題はマザーズ市場。水曜の東証マザーズ指数は8%安と急落し今年2番目の下落率。「信用取引で買い進めていた個人が一転、持ち高圧縮に動く」との解釈。加えてヘッジファンドによる売り崩しの動きも下げに拍車との声。
一方で4月訪日外国人客数は前年同月比18%増の208万人。3月に続いて単月として過去最高を記録した。もっとも1~3月は3~5割増だったからやや伸び悩みだが悪くない。特にアジアからの訪日客が好調だという。
上場した二つのETF。設備投資や人材投資に積極的な銘柄を支援するというのが趣旨。従来、日銀はこの和kで1364、1474、1591、1592、1593、1599の6本を購入してきた。すべてJPX日経400系だった。ここに新たなETFが登場する。一つは大和の「MSCI日本株人材設備投資指数(1479)」。もうひとつは野村の「NEXTFUNDS野村企業価値分配指数連動型上場投信(1480)」。日銀の3000億円の追加購入枠での対象となる予定。25日には日興の「上場インデックスファンド日本経済貢献株(1481)」も登場。日々12億ではこころもとないが、ひょっとして購入枠の拡大でも出てくれば話題になろう。
日経平均株価は1円高の16646円。先週木曜も16646円だったから結局も何も動かなかった1週間ということになる。りそな、スズキが上昇。住友鉱、NTNが下落。
20日(金):
NYダウは91ドル安の17435ドルと3日続落。S&P500は反落し3月28日以来の安値となった。基本は前日のFOMC議事要旨での早期利上げ観測を嫌気した流れとの解釈。FRBのフィッシャー副議長が講演で6月に利上げするかどうか言及しなかったことが市場の失望を誘ったという解釈もある。
ニューヨーク連銀のダドリー総裁は「米経済は6月か7月に利上げを正当化するほど十分に力強い可能性がある」とコメント。これが早期利上げ懸念となり株価下落の誘因との解釈もある。米国株と原油価格の下落で、円の需要が高まったという指摘。
木曜に第63回規制改革会議が開催された。「例えば、食卓にバターが十分に届くように、売り惜しみが疑われる場合には国が輸入したバターを売り渡さないこととします。さらに、どうすれば酪農家の経営意欲が高まるか、抜本的な改革を考えていきたいと思います。規制改革に終わりはありません。世界はどんどん変化していきます。その中から新しい要請が出てくる。それに答えていかなければ日本は成長していくことができないわけであります。今後更にギアを上げて規制改革課題を発掘・解決していくことで経済成長につなげていきたいと思います」と安部首相。
また産業競争力会議も開催され「日本再興戦略2016」(素案)について議論。「IoT推進コンソーシアム」、「ロボット革命イニシアティブ協議会」。「Iot推進ラボ」などは既に登場している。面白そうなのは「キャッシュレス化等によるビッグデータの利活用促進」。そしてITタグを利用した実証事業。高齢者の移動手段などは自動走行運転につながっている。目新しい言葉は「2020年のショーケース化」。意味不明ながら何かありそうな言葉。
日経平均株価は89円高の16736円と続伸。TDK、損保ジャパンが上昇。クホタ、コマツが下落。
(2) 欧米動向
陳腐だったコメントはトランプ氏。
100億ドルを超える個人資産の明細を記録した新たな報告書を提出した。
実際は過大申告という見方もある。
本当に大統領選挙を戦えるマネーがあるのかどうかが興味の対象なのだろう。
「私は素晴らしい企業を築き上げ、偉大な不動産ポートフォリオを構築した。
その多くは世界有数の優れた象徴的な建物と見なされている」とのコメント。
あまり期待ができる人物ではなさそうな気配。
ゴールドマンが「ドル底打ち宣言」をしたのが先週。
結論は「金融政策の正常化から今後2年で15%のドル高が進む」。
そして・・・。
「通常通りの利上げとなれば2017年末までに1.25%の利上げ(0.25%×5回)。
足元で市場が織り込んでいるのは0.35%で大きなかい離がある」。
足元は長期のドル高相場の入口との認識。
今後3~6ヶ月ドル円は横ばいとの見通しだが黒田サプライズはココに織り込まれている。
結局、米利上げ=金融正常化。
東京は財政出動&消費増税延期の催促相場と言う構図。
日銀が動く前に永田町が動くことに期待というところだろうか。
消費増税延期は内需や小売り・外食・食品にはプラス要因。
銀行にはマイナス要因だが、米利上げ観測がこれを消してくれるのだろうか。
いずれにしても、専門家として君臨しているのは外国人ブレーン。
代表はプリンストン大学クルーグマン教授とコロンビア大のスティグリッツ教授。
特にクルーグマン教授のコメントは響く。
「消費税10%は絶対不可」。
「消費増税は日本経済にとって自己破壊的な政策」。
「格付けはあまり考慮しなくていい。私が格付けするなら日本国債はAAA」。
「自国の通貨を刷ることができる国にはデフォルトはありません」。
これが霞が関でなく永田町的世界の常識なのだろう。
(3)アジア・新興国動向
民間投資が減少し公共投資依存に陥った中国経済という指摘。最近は中国がさほど話題にならなくなったが、現実は減速している印象。
先週の世界株式相場の主要株価指数25の騰落ランキング。
1位南アフリカ週間騰落率2.49%
2位日本同1.97%
3位シンガポール1,06%
4位台湾0.96%
5位スイス0,90%
逆に
25位ブラジル▲4.02%
24位ロシア▲3.12%
23位トルコ▲1.86%
22位フィリピン▲1.85%
14位米国▲0.20%
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
20日(金):コンビニ売上高、G7財務相・中央銀行総裁会議(仙台)、米中古住宅販売
23日(月):貿易統計、カナダ休場
24日(火):米新築住宅、独ZEW景況感、ユーロ圏財務相会合
25日(水):3か月気象予報、米FHFA住宅価格、独IFO景況感
26日(木):G7首脳会合(伊勢志摩サミット~27日)、米耐久財受注
27日(金):消費者物価、米1~3月GDP改訂値
22日(日)満月
23日(月)水星順行開始
25日(水)人とくるまのテクノロジー展(パシフィコ横浜)
26日(木)伊勢志摩サミット、変化日
27日(金)伊勢志摩サミット
30日(月)NY休場(メモリアルデー)、ロンドン休場(スプリング・バンク・ホリデー)
31日(火)コンピューテック台北(~4日)
火曜の日経1面「春秋」では冒頭に福沢諭吉先生が登場。
福沢先生が先物市場の意義を認めていたとした後で取引所の話題が展開されていた。
電力先物市場の登場を踏まえての市場論ですが、福沢諭吉先生の興味深い考察。
「毒をもって毒を制するように、投機をもって投機を制す。
健全な取引を広げて、市場の厚みを増せば、おのずと価格の乱高下は抑えられる」。
明治時代に喝破されていたこの事実。
確かに市場の厚みの薄さは投機の色の濃い向きに有利に働くだろう。
市場が厚くなれば恣意的な腕力相場など展開するべくもなくなる。
100年経っても気が付かないのはさびしいこと。
日経スクランブルでは「高速売買、長期投資家まで」の見出し。
「株価が材料を織り込む時間は一段と短くなり、副作用で株価の変動幅が大きくなる可能性がある」。
そして「高速売買ニーズはますます高まる」。
また「個人投資家の立場では不公平感は否めない」。
本当にそうなのかどうかは結構疑問の余地。
政府が月末に閣議決定する「1億総活躍社会の実現に向けた工程表」。
2025年度に204万人の雇用増や24.3兆円の可処分所得増加につなげたい考えだという。
(1)子育て支援の充実
(2)介護支援の充実
(3)高齢者雇用の促進
(4)非正規雇用者の待遇改善
(5)最低賃金の引き上げ
これらの施策を実現することで、労働者数が2020年度に117万人、
25年度に204万人増加。賃金総額は2014年度時点の240兆円から20年度に20.5兆円、
25年度に29.5兆円増加する。
賃金増により可処分所得も20年度に13.7兆円、25年度に24.3兆円増加すると試算。
シャープが前期債務超過で8月1日に二部指定替えになる可能性。
となると225から除外される。
その時225に入るのはおなじ技術セクターから。
大和のレポートでは本命ヤマハ発動機(7272)。
日経平均パッシブ連動資産のリバランスに伴う7月29日終値で発生予定。
日経平均の連動資産は各銘柄2300万株程度との観測。
つまり2300万株の買い需要が生まれる可能性があることになる。
その他候補としては、ジャパンディスプレイ(6740)、JVCケンウッド(6632)、セイコーエプソン(6724)、大塚HD(4578)など。