<兜町カタリスト> 「シルレル」
フィンテックに関する事実と誤解。
自民党は金融とITを融合した「フィンテック」の促進を政府に求める提言をまとめた。
「日本発のフィンテックが世界で拡大、成長していくことを目指すべきだ」と指摘している。
しかし・・・。
このフィンテックというものの正体は、シリコンバレーとウォールストリートの対決。
シリコンバレーはウォールストリートに生息する旧来型の金融機関の解体が狙い。
そしてウォールストリートはフィンテックこそ自分たちの未来の領域と意気込む。
まさに呉越同舟の感。
ウィール街解体を目指すものに乗るウィール街というパロディでもある。
この帰趨が決着したときに残るものが金融の勝者かというとまたそうでもない。
15年前にネット証券の企画担当で画策したのは手数料の引き下げ競争。
目論見通りに安くなりすぎるほどになった。
証券会社の機能はリテールではほぼ発注機能だけが残ったことになる。
次の段階で起こるベきことは、過多な手数料競争による証券会社の自然淘汰。
これが残念ながらまだ起きてはいない。
そしてその先に見据えていた未来の最終段階は「ネットからヒューマンへ」。
そろそろ投資家層もふれあいを求めてきている気がする。
「株屋さんの話は聞きたくない」から「誰かと話したい」への移行。
この流れをゲットできれば、次の10年で勝てる証券会社ができるのだろうと思う。
それは無機質なシステムだけでなく、ヒューマンな部分を持った証券会社。
コスト競争の次はおそらく未来透視競争になる筈。
ところで・・・。
ITバブルや不動産バブルの崩壊を予言したエール大学のロバート・シラー教授。
コメントは「米国株はとても割高だが、投資を止めるべきでもない。
発案した『CAPEレシオ』は20倍台半ば。
株式投資のリターンとしては5%と物足りない。
しかし米10年物国債利回りが2%以下に下がっている中では魅力的」。
日本株のCAPEは1990年前後に100倍近くで世界最高記録となった。
当時日本経済に最も強気だったのは日本人。
だからこそバブルが起きた。
過去20年の平均から見れば、現在のCAPEの水準は高くない。
買いのタイミングだろう。
欧州も悪いニュースが多いが、株価は割安だ」。
現在、日本経済に最も弱気なのは日本人という気がするが・・・。
因みにCAPEレシオとは・・・。
CAPEでは過去10年間の平均利益に物価変動を加味した値を一株利益として指数を算出。
景気循環の影響を調整した株価の割高、割安を見ることができることも特徴の一つ。
景気変動調整後のPERとも言われる。
CAPEでは割高、割安の分岐点は25倍程度と言われている。
26倍を超えたのは、
(1)1929年の大恐慌直前
(2)2000年4月にはじけたITバブル
(3)2008年のサブプライムローン・バブル
ところで・・・。
以下は株式市場の傾向。
株価が上がる始めるまで市場参加者は見向きもしない。
商いの薄さや業績の不満足感を漂わせるコメントばかり。
しかし上がり始めるとマーケットはその銘柄に気がつく。
あちらもこちらも一気にそのテーマや材料を囃したて多くの場合は過熱感。
そして信用規制が入り一端相場は終焉。
でも本物はここで押しても規制などお構いなし。
「我こそはテンバーガー」と糸の切れた凧のように上がり続ける。
でもこうなると、最初に付けた人たちはもう株価についていけない。
だからさらに上がる。
手替わりが何度か行われると、さすがに過熱に気がつきようやく相場も沈静化。
これがフツーの相場なのだろう。
買って売ってさらに上がれるとまた買うことはできない投資心理。
つまり銘柄の成長は1幕のドラマであり売ったあとはいつもエピローグ。
プロローグよりも前日練習などで訓練すればエピローグを迎えるのも先になるのかも知れない。
多くの人に気がつかれるまで我慢できるか、あるいは恐怖の絶頂の高値で持ち続けられるか。
究極の選択ではあるが、どちらかに参加しないことには、市場に乗ることはできないもの。
《兜町むかし話》
「売り声」
むかしむかし。
きっちょむさんと言う、とてもゆかいな人がいました。
ある日の事。
きっちょむさんはふるいを仕入れると、町へ売りに行きました。
久しぶりに町へ来たので、どの道順で売り歩いたらいいのか分かりません。
するとそこへ、一人の魚売りがやって来て、
「ええ、魚はいらんかなー、魚はいらんかなー」
と、大声で売り歩いたのです。
「よしよし、あの魚売りの後ろからついて行けば、うまい具合に町を一巡り出来るだろう」
そこできっちょむさんは、魚売りの後ろをついて歩きました。
まず魚屋が、
「魚、魚はいらんかなー」
と、言うと、きっちょむさんがあとから、
「ふるいー、ふるいー」
と、続けるのです。
「魚はいらんかなー」
「ふるいー」
「魚はいらんかなー」
これを聞いた町の人は、くすくすと笑い出しました。
なぜなら、二人の売り声を続いて聞いていると、
「古い魚は、いらんかなー」
と、聞こえるからです。
これでは、魚が売れるはずがありません。
そこで魚屋は、きっちょむさんにお金を渡して、帰ってもらったのです。
それから数日後、きっちょむさんはメガネを仕入れると、また町へ売りに行きました。
このときは株屋さんが株を売り歩いているのに出会いました。
今度は、この株屋さんの後をついてメガネを売り歩く事にしたのです。
株屋さんが、
「株はいらんかなー」
と、言うと、きっちょむさんは、
「めがね─」
と、売り声をあげます。
「株はいらんかなー」
「めがね─」
「株はいらんかなー」
これを聞いた町の人は、またくすくすと笑い出しました。
なぜなら、二人の売り声を続いて聞いていると、
「芽がねえ(無い)、株はいらんかなー」
と、聞こえるからです。
これでは、株が売れるはずがありません。
そこで株屋さんもまた、きっちょむさんにお金を渡して、帰ってもらいました。
株屋さんに勝てるきっちょむさんはひょっとすると最高のファンドマネジャーかも知れません。
おしまい。