<兜町カタリスト>
「おむすびコロリン」
むかしむかし。
株好きのおじいさんは、取引所の横の鎧橋の近くに腰をかけてお弁当を食ベる事にしました。
「うちのおばあさんが握ってくれたおむすびは、おいしいからな」
ひとりごとを言いながら、タケの皮の包みを広げた時です。
コロリンと、おむすびが一つ地面に落ち穴の中に入って行きました。
そしてコロリンと携帯がなりました。
携帯の画面では持ち株がいきなりストップ高に。
「おやおや、不思議なものじゃ」
おじいさんが穴をのぞいてみますと、深い穴の中から、こんな歌が聞こえてきました。
♪おむすびコロリン コロコロリン。
♪コロリンころげて 穴の中。
「不思議だなあ。誰が歌っているんだろう?」
とても綺麗な歌声です。
「どれ、もう一つ」。
おじいさんは、おむすびをもう一つ、穴の中へ落としてみました。
するとすぐに、歌が返って来まて携帯がコロリンとなりました。
「ヒョーまたストップ高じゃ」
おじいさんはすっかりうれしくなって、おむすびを全部穴へ入れてしまいました。
次の日、おじいさんは昨日よりももっとたくさんのおむすびをつくってもらって、鎧橋にいきました。
前引けになるのを待って、コロリン、コロリンと、おむすびを穴へ入れてやりました。
そのたびに穴の中からは、昨日と同じかわいい歌が聞こえました。
「やれやれ、おむすびがお終いになってしまった。
だけど、もっとあの幸せなコロリンの音と歌声を聞きたいなあ。
・・・そうだ、穴の中へ入って頼んでみることにしよう」
おじいさんはおむすびの様にコロコロころがりながら、穴の中へ入って行きました。
するとそこには数え切れないほどの、大勢のネズミたちがいたのです。
「ようこそ、おじいさん。おいしいおむすびをたくさん、ごちそうさま」
ネズミたちは小さな頭を下げて、おじいさんにお礼を言いました。
「さあ、今度はわたしたちが、お礼におもちをついてごちそうしますよ」
「これはおいしいおもちだ」。
おじいさんはごちそうになりました。
そして欲しい物を何でも出してくれるという、打ち出の小づちをおみやげにもらって帰りました。
「おばあさんや、お前、何が欲しい?」
と、おじいさんは聞きました。
「そうですねえ。色々と欲しい物はありますけれど、配当のいい銘柄をもらえたら、どんなにいいでしょうねえ」
と、おばあさんは答えました。
「よし、やってみよう」
おじいさんが小づちを一振りしただけで、おばあさんのひざの上には、もうREITが乗っていました。
もちろん、ちゃんと上場しているREITです。
おじいさんとおばあさんは株やETFやREITを育てながら、仲よく楽しく暮らしましたとさ。
おしまい
(兜町カタリスト櫻井)