<兜町カタリスト>
「一寸法師」
むかしむかし、兜町というところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
二人は株が好きでしたがなかなか儲かりませんでした。
そこでおじいさんとおばあさんは神さまにお願いしました。
「神さま。
親指くらいの小さい儲けでけっこうです。どうぞ、わたしたちにいい株をさずけてください」
すると株の神様と思しき人が夢に現れて「この小さな小さな株を買いなさい」と言ったのです。
おじいさんにしてみれば親指でつまめるほどのお金で買える株でした。
二人はさっそくこの株を「一寸法師」という名づけて大切に持ちました。
ある日の事、夢の中で一寸法師株はおじいさんとおばあさんに、こんな事を言いました。
「わたしも相場へ出て行って、働きたいと思います。どうぞ、旅の支度をしてください」
すると外国の投信会社が「日本小型株ファンド一寸法師」という投信を設定しました。
おばあさんはトレンドラインをチャートに浮かベて、一寸法師の向かう方向を示してやりました。
「ほら、この材料をお持ち」
「ほら、このトレンドラインに乗っかって。
投信に買ってもらうんだよ」。
「はい。では、行ってまいります」
一寸法師はトレンドラインに乗ると、鉄火場の市場へと出かけました。
「たのもう、たのもう」
「はーい。・・・あれ?」
出て来た大型主力株や日経平均株価は、首をかしげました。
「おや、誰もいないねえ」
「ここだよ、ここ」
大きな株や指数は小さな一寸法師をやっと見つけました。
「あれまあ、何て小さい株だろう」
そして一寸法師は、日経平均の提灯みたいな存在になりました。
ある日の事、一寸法師は日経平均のお供をして、動いていました。
すると途中で、突然、数匹の鬼が現れたのです。
「おおっ、これはおいしそうな指数だ。なぶってやることにしよう」
鬼は日経平均を眺めると、下げようととしました。
「待て!」
一寸法師はおじいさんにもらった材料を出して、鬼に飛びかかりました。
ところが、
「何だ、虫みたいな株だな。お前なんぞ、こうしてくれるわ」
鬼は一寸法師に売りを浴びせると、わずか2ケタの株価にしてしまいました。
しかし一寸法師は材料をたくさん振り回して、鬼に対抗してまわりました。
これには、鬼もまいりました。
「いっ、いっ、痛たたた!」
困った鬼は、あわてて一寸法師を買い戻しました。
「たっ、たっ、助けてくれー!」
鬼たちは、泣きながら逃げ出してしまいました。
「見たかバイオ株の強さ!
小さくたって大きなことができるんだぞ。
しかもみんなが幸せになれる材料を持っているんだ。
これにこりて、もう二度とここに来るな!
・・・おや? これは何でしょう、日経平均さま」
鬼が行ってしまったあとに、不思議な物が落ちていました。
「これは打ち出の小づちという物ですよ。
トントンとふると、どこでも好きな位置に株価がいくのです」
そこで一寸法師は、日経平均に頼みました。
「わたしの株価がのびるように『上がれあがれ』と言ってふってください」
日経平均は喜んで、打ち出の小づちをふりました。
「上がれ、上がれ」
すると一寸法師の株価は、打ち出の小づちをふればふっただけグングンと上がって、誰にも負けない立派な値がさ株になりました。
そして一寸法師は日経平均に採用されて、5ケタの株になるほどに、大変出世しました。
そして大きくなった一寸法師を持ちながらおじいさんとおばあさんは兜町で幸せに暮らしましたとさ。
おしまい
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《兜町ポエム》
「空もとべるはず」(スピッツ)
儲けたい気持ちを抑えられないまま
リーマンの影を恐れて
落ちてくるナイフを拾えない僕を
おどけた動きでなぐさめた
色あせながらひび割れながら輝く銘柄みたいに
君と出会った軌跡がこのチャートにあふれてる
きっと今は自由にトレンド飛べるはず
夢をつぶした悪材料海原へ流れたら
ずっとそばで上がっていてほしい
切り札にしてたミエミエの材料は
満月の相場に輝いた
はかなく揺れる買いの匂いで深い眠りから覚めて
君と出会った奇跡がこの相場にあふれてる
きっと今は自由に何でも買える筈
ゴミできらめく株価が値上がりを拒んでも
ずっとそのまま笑っていて欲しい
(兜町カタリスト櫻井)