<兜町カタリスト>
「カチカチ山」
主要国株式の1年後の売上高とEPSの推移を見てみると・・・。
日本(TOPIX):売上高2.7%増、EPS=11.2%増。
米国:売上高3.7%増、EPS=6.7%増。
ドイツ:売上高1.9%増、EPS=6.1%増。
英国:売上高1.1%増、EPS=1.9%増。
中国:売上高6.8%増、EPS=7.4%増。
世界全体でも売上高3.6%増、EPS=6.8%増。
所詮見通しであるから当然狂いもあろう。
いみじくも土曜の日経朝刊「大機小機」の「波乱の株価は何を語るのか」で指摘されてもいた。
「株式市場では多くの経験と研究が積み重ねられている。
そこから得られる教訓は
(1)専門家の見通しは頼りにならない。
(2)短期の予測は不可能。
(3)現在の短期的変動から長期を展望することも難しい。
つまり短期も長期も見通しの信頼性がない中で株価の未来を占うことすらナンセンスということ。
とはいえ、昔と違い我田引水的自己陶酔的予測影を潜めてもいる。
その中で圧倒的に全体的業績数字の伸び率が高いのは東京株式市場であることは間違いない。
もっともEPSは自社株買いや増配で分母を減らせば分子の業績が伸びなくても上昇する。
しかし売上高は中国の6%台、米国の3%台に劣るものの3%近い増加で減る訳ではない。
だったら、もっと自信を持って右往左往しないという選択肢が必要だろう。
人は株を買っている。
だがあまりにも株価に心理が左右され過ぎた時間が長すぎるような気がする。
以下は「株式版カチカチ山」。
↓
むかしむかし。
兜町の裏側にタヌキのような一匹のファンドが住んでいました。
ファンドは悪い奴で、兜町で相場がたっていると、
「やーい、弱虫」
と、悪口を言って、夜になるとささいな悪材料をネタに他所の先物相場を通じて売り物を仕掛けていくのです。
兜町はファンドのいたずらに我慢出来なくなり、相場に「バズーカ砲」というワナをしかけてファンドを懲らしめました。
しばらく静かにしていたファンドも時間経ったらまたうごめきはじめました。
タヌキのようなファンドは人の良い投資家の多い兜町で宣言しました。
「私たちは反省しています。
もう悪い事はしません。
秘伝の投資法をお教えしましょう」。
「秘伝の投資法?」。
「はい。
とっても簡単ですし一度試せば大儲けできます。
きっとみなさんによろこんでもらえますよ」。
タヌキのようなファンドに言われるまま、投資をしてみたとたん・・・。
またタヌキファンドは夜や海の向こうで悪さをして兜町を苦しめました。
「ははーん、バカな兜町め。ファンドを信じるなんて」
タヌキファンドはそう言って、ある時はニューヨーク、ある時は中国を材料にして兜町に神出鬼没を続けました。
しばらくして兜町は株価の大幅な下落にビックリ。
「ああっ、なんて事だ」
兜町の人たちが心慄いてしょげていると心やさしいウサギのような別のファンドがやって来ました。
「兜町のみなさん、どうしたのです?」
「タヌキのようなファンドが株価をこんなメタメタにしてしまったのです。
「ああ、あの悪いファンドですね。
わたしが株価のかたきをとってあげます」
ウサギファンドは悪いタヌキファンドをやっつける方法を考えると、タヌキファンドを中小型株の空売り相場に誘いました。
「タヌキくん。兜町へしばかりに行かないかい?」
「それはいいな。よし、行こう」
しばかりの帰り道、ウサギファンドは火打ち石で『カチカチ』と、タヌキの売っている玉に火を付けました。
「おや? ウサギさん、今の『カチカチ』と言う音はなんだい?」
「ああ、兜町は材料株買いのカチカチ市場だ。だからカチカチといっていろいろな材料が出てくるんだ」
「ふーん」
しばらくすると、タヌキの売っている玉が『ボウボウ』と上がり始めました。
「おや? ウサギさん、この『ボウボウ』と言う音はなんだい?」
「ああ、この市場はボウボウ市場さ、だからボウボウというのさ」
「ふーん」
「そのうちに、タヌキの売った玉は大きく上がりだしました。
「なんだか、上がるな。・・・損だ大損だ、助けてくれー!」
タヌキファンドは大損をしました。
次の日、ウサギは新しい投資アイディアを持って、タヌキファンドの所へ行きました。
「タヌキくん、大損の薬を持ってきたよ」
「薬とはありがたい。
大損回避の薬をはやくぬっておくれ」
「いいよ。
ウサギファンドはタヌキファンドをそそのかして日経レバの空売りを仕掛けさせました。
するといつまにか「マイナス金利」という声が本石町の方から聞こえてきました。
「うわーっ! 痛い、痛い! この政策はとっても痛いよー!」
「がまんしなよ。よく効く薬は、痛いもんだ」
そう言ってウサギは、1570の買いと1357の売りを続けました。
「うぎゃーーーーっ!」
タヌキファンドは損がかさんで気絶してしまいました。
おしまい
(兜町カタリスト櫻井)