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《マーケットストラテジーメモ》 12月第2週


【推移】
7日(月):
週末はECBの追加金融緩和について「小粒で失望感」とか「肩透かし」との解釈での大幅安。NYは252ドル安、日経平均は435円安となった。一方NYでは21.1万人増となった雇用統計で景気実態の良さを好感しての大幅高。NYダウは360ドル高、CMW225先物は250円高の19710円での終値。結局一晩悩んで地球が1週したら相場観は変わっていたということだろうか。だから付和雷同は慎むべきとも言える。
そもそもどうして日によって相場観は変わるのだろうか。外部材料の変化に対応しているという理由は間違っていない。日々刻々動くのが材料であり相場でもある。しかし、このリズム観は何なのだろう。上げれば下げ、下げれば上がるという真逆の心理を織りなしているのは、材料ではなく期待と不安。あるいは「恍惚と不安の二つ我にあり」の投資心理だろう。上がれば不安、下げても不安、でも上がればさらに上がる期待、下げればリバウンドへの期待。

4つの心理を読まなくてはならないし、この4つの心理が相場変動要因の最たるもの。ECBの追加金融緩和も雇用統計の数字もむしろ刺身のツマみたいなもの。よしんば経済指標や業績発表のスケジュールがなかったとしても相場は鼓動のように動くに違いない。だからエコノミストのように数字をあれこれ斟酌することは、無意味ではないにしても労多く益少ないもの。買う心理と売る心理、そこに空売りする心理と買い戻す心理を加味することが必要になる。これは素直な幼児の心理といってもいいかも知れない。期待には失望が伴い、不安には朗報も伴う。何もなくとも相場が動くことはその証拠かも知れない。法人税は29%台、中小企業の設備投資の固定資産税は減税。悪くない方向が出てきている。

国内に出回る現金は年末に100兆円を突破の見通し。背景はインバウンドでの買い物需要。10月は前月末比5.9%増加で97兆2500億円。ペイオフが実施された2002年以来の伸び率となったという。年末時点では103兆円との見通し。現金が出回るということはある意味多少のインフレ期待が高まるのかも知れない。
日経平均株価h193円高の19698円と反発。ただ東証1部の売買代金は1兆8918億円と2兆円割れ。高島屋、良品計画が上昇。国際帝石、セガサミーが下落。

8日(火):
株式相場は売りと買いが織りなすもの。だから、どうしてもアンチテーゼや対立軸が存在する。買わなければいけない時に買わない。売らなければいけない時に買う。これも良く遭遇すること。あるいはECBの追加金融観測が市場の買い要因と言っていたのに結果に失望で株価は大幅な下落。
アメリカが金融緩和を終えれば株安と観測していたのに、実際にやめたら株高。シェールがアメリカを救うと言っていたのにそのシェールがアメリカの足かせ。アンチテーゼというよりも多数派の解釈は大きく間違っていることが多いということでもあるだろう。「人の行く裏に道あり花の山」という格言は多数意見の反対論つまり少数派に正義とは言わないまでも正しさがあるということ。おそらく『専門家はしばしば理路整然と間違える」と言い換えてもよさそうだ。
日経平均株価は205円安の19492円と反落。味の素、神栄が上昇、日揮、住友鉱が下落。


9日(水):
市場に「神の見えざる手」なんてものは存在しないのだろうが、巧みな誘導には舌を巻かざるを得ない。アダム・スミスは「投資家は全体を見渡さずに自己利益に導かれた行動をする。安全且つ効率的であろうとすることが結果的に見えざる手に導かれるかのごとく行動する」と言った。この「見えざる手」とは少し意味合いが違うが市場の視点を巧みに変える技はすごいものがある。
ウクライナ問題や中東問題を注視してスタートした2015年。途中でギリシャ問題を熱視し、それが過ぎると既に新しくもない中国の景気後退が主要なネガテーマ。そのうちアメリカの利上げを問題にし、それが逆転ポジ要因になると今度は原油価格の下落を問題視。財政危機の問題が金融に移行し、アッと言う間に資源価格に論点を転嫁。
株式市場は移ろう場だが、それにしてもこの七変化のような動きは特有のもの。参加者に深く考える間を与えずに次の論点に移行すれば事の本質は露呈しないという利口な方法でもある。そもそもどんなに奇抜な衣装をいくつも纏っても中身は一緒。手品だって小さな驚きでは満足せず、大がかりな変化に観客は酔い痴れる。これが市場の本質の一部なのかも知れない。

日経1面の見出しは「原油安止まらず」。「原油安は資源国通貨や資源株にも下落圧力をかけ、減速が鮮明な新興国景気を一段と冷やしかねない」。もっともらしい解釈だが、これは本当に悪いことなのだろうか。まずは、ゼロサム社会のような市場にとってマネーの置き場が変わるということ。目先暗雲の漂う新興国よりも原油安のメリットを享受できる国にマネーは向かう。となれば東京市場はその第一候補となろう。安全通貨として円が買われ円高になるという声もある。しかし、125円で精いっぱいの円だし、これ以上の円安を望む声は少ない。そもそも通貨が売られて繁栄した国はない。バブルの頃は「円高株高」が常識だったのだから市場論理は原点回帰しても良い筈。

あるエコノミストの分析は「原油安は日本経済にとってプラス」。7~9月の法人企業統計では製造業の経常利益は前年同期比0.7%減。売上高、売上数、人件費などがマイナス要因だったが交易条件は改善。前年同期のマイナス4483億円→3兆31476億円。2012年以降最大の改善となっている、この原動力は原油価格安だというのである。付和雷同で「大変だ」というのではなく、底流を見据えることが重要だろう。だれが考えても資源価格の下落は資源輸入国の日本にとって悪くないに決まっている。本来はこれを1面トップにしたかったのだろうというのが「公的年金自前で株運用」。もっとも全面的に個別株のアクティブ運用を解禁するのではなく、パッシブ限定との見方。これならば専門家もさして必要としないし無難な案だろう。面白いのは反対意見が企業側にあるということ。
議決権行使に懸念があるというのは如何なものだろう。誰が見ても正しい経営をしていれば、横やりはそうははいらないだろう。あんたの会社の株を買うかも知れないと言っているのに不可解な反対意見に聞こえる。7~9月の実質GDP改定値は年率換算プラス1%に上方修正。速報値はマイナス0.8%だった。個人消費は鈍かったが設備投資は拡大との印象。
でもここで面白かったのは麻生財務大臣の「あまりに差がつきすぎ。いい方に外れたからという類の話ではない」というコメント。日本のGDPも所詮中国並みの信頼性しかないのかも知れない。そして経済統計という数字そのものの信ぴょう性は常に疑うべきなのだろう。日銀は火曜もETFを369億円買った。これで今年の累計は2兆9218億円。枠はあと783億円。因みにREITは既に4日に12億円買った段階で今年の累計が897億円で枠はあと3億円。玉のなくなった日銀に魅力はあるかといえば、残念ながらない。どうする?というところ。
日経平均株価は191円安の19301円と続落。積水化、ルネサスが上昇、三菱UFJ、ピジョンが下落。

10日(木):
日経平均株価は営業日数6日で1000円近くの下落。世界の株価も下落しているが、その理由はECBの金融緩和への過度な期待、原油安、中国景気不安。
そして米利上げ問題などだが、これは世界の話。日本株が一番売られる要素でもなかろう。でも実感は日本株への過度な売り圧迫の継続感。しいて言えば121円台になった円高ドル安の嫌気なのだろう。いじけた視点ではないがどうもそう見える。

日経朝刊ではとってつけたように「サウジ系、日本株運用縮小」の見出し。サブは「原油安、資金引き上げ」。原油価格の下落でサウジアラビア通貨庁(SAMA)が日本株を売っているという記事。既に秋口から報じられたいたことだが検証した結果。9月末時点でサウジの対日投資の時価総額が3分の1に減少していた。夏から秋にかけて外国人投資家は現物株を4兆円売っていたから、つじつまはあう。しかし最近の外国人は買い越し基調で感覚にタイムラグがあるような気もする。 俯瞰してみれば株価は陽気な右肩あがり。しかし微分してしまうと株価は陰気な右肩下がり。この相場観の時間軸の対立が相場をわかりにくくする。さらに買いも売りもその動機は一つではない。
例えば買いは、上っているから買う、下がり切ったように見えるから買う、利益がでたから買う。すくなくとも3つの動機が存在している。逆に売りは、下がっているから売る、上がり切ったように見えるから売る、利益が出たから売る。こちらも少なくとも3通りの背景が存在する。つまり正解は9個のうちから1個を選ぶという作業。正当確率は約1割だから複雑な連立方程式にならざるを得ない。

木曜まで空しく3日続落。しかも5日連続の陰線。そして迎えたメジャーSQ。
「日経平均は水曜に200日移動平均線割れ。木曜に週足ベースでの52週移動平均線(19146円)を割り込んだ。ほぼ1年間の株価推移を示す200日線・52週線を割れ」と市場関係者の声。「昨年はSQ(12月12日)の翌週、16日(火)が安値(16755円)。そこから12月24日の17854円まで1週間で1100円上げてほぼ年末高で終了。今年は米FOMCというもうひとつの不透明要因があるが、通過すれば日本株リバウンドの条件が整う」。
日経平均株価は254円安の19046円と3日続落。三菱マテ、プロネクサスが上昇。東亜DKK、浜ゴムが下落。

11日(金):
日経マーケット面に登場したのは「証券各社、来年の見通し」。2016年末の日経平均は概ね22000円前後。一番高いのは野村の22500円~23500円、UBSの23500円。次がGSの22700円。一番低いのはみずほの21000円、メリルの21600円。概ね20%程度の上昇率を想定している。ここで考えておきたいのは値幅と率の問題。確かに20%程度だが8000円の時の20%は1600円、19000円の時の20%は3800円。同じ率でも値幅では2倍以上の違いが出てきている。株価が上がれば上がるほど値幅は大きく振れるのが相場。つまり、想定以上の値幅が出始めることも予想した方が良いような気がする。
日経平均株価は183円高の19230円と4日ぶりの反発。メジャーSQということもあるが東証1部の売買代金は3兆659億円。トヨタ、小野薬品が上昇。東京海上、ティーガイアが下落。


(2) 欧米動向
またヘッジファンドにも今年は苦難の年だったとFTが報じている。
ただ見出しは「「ヘッジファンドは厳しい年の傷を癒す」。
年初からのユーロ安・ドル高戦略が不発になりパフォーマンスは悪化。
昨年30%儲けたファンドが今年は20%近くのマイナスだという。
これだけのバッドパフォーマンスを前にしての姿勢が面白い。
「厳しい2015年も終わりに近づき多くのヘッジファンドは来年について楽観的」。
そんなものだろうか。


(3)アジア・新興国動向
新興国景気と米金利問題をメインディッシュとしてきた市場。
今度は原油価格という問題が厚みを増してきただけに過ぎない。
そもそも原油価格は下落の継続。
たまたまバレル40ドルを割れたからといって下落は今に始まったことではない。
しかし、それでも重要課題としてクローズアップされれば市場は敏感にならされる。
「敏感になる」のではなく「敏感にならされる」という表現の方が妥当だろう。
ただ、シェールバブルに端を発した今回の原油安。
ポルトガルやギリシャの財政問題などとは異なり、結構大きな意味を持っている気がする。
それは新興国と先進国。
産油国と消費国の立場が逆転する可能性が出てきたということ。
特に・・・。
原油のない日本はオイルショックに見るまでもなくエネルギー源確保のために涙ぐましい努力を続けてきた。
しかし需要と供給で決まる価格が高低逆転すれば当然立ち位置は変わる。
「原油が足りなくなると戦争が出来なくなるから、原油確保のために戦争をする」と真珠湾攻撃があったという説もある。
本末転倒の論理だが、原油が死命線であるこの国にとって原油安はどう考えても悪くない。
シェールなどで産油国への復活を夢見たアメリカとは訳が違う。

原油安の影響はマネー社会にも表れている。
中東湾岸地域の政府系ファンドの投資資金引き揚げ観測をFT紙が報じている。
7~9月期だけで190億ドルの資金流出観測。
これは過去のものなのか現在進行形なのかは定かではないが、8月にはあったのだろう。
モルガンスタンレーの観測ではブラックロックからは4~9月に310億ドルの流出観測。
これは原油安の悪い面ではあるが、所詮一過性のものの筈。

【展望】
スケジュールを見てみると・・・。

14日(月)12月調査日銀短観、首都圏マンション販売、
15日(火)米FOMC、消費者物価、NY連銀製造業、独ZEW景況感
16日(水)11月訪日外国人数、米住宅着工、鉱工業生産、イエレンFRB議長講演
17日(木)日銀金融政策決定会合、貿易統計、米経常収支、CB景気先行指数、EU首脳会議
18日(金)黒田日銀総裁会見、BBレシオ、米SQ、「スターウォーズ」最新作公開

ゴールドマンのレポートは「2016年の相場展望:申年も強気スタンス継続」。
サブタイトルは「懐疑論者への反論:6つの理由6つのテーマ」となっている。
そのさわり。
「2倍近い利益増により日本株は2013年以降、先進国で最も高いパフォーマンスを示してきた。
2016年も高リターンが見込まれ、TOPIXは14%上昇して1800ポイント。
(日経平均で22700円)に達すると見る。
(1)2015年度14.1%、2016年度16.7%のEPS成長
(2)2016年度予想PER14倍、PBR1.3倍と割安なバリュエーション
(3)コーポレートガバナンスの向上が促す持ち合い解消やM&A,過去最高の株主還元
(4)構造改革の進展
(5)財政/金融両面からの景気刺激策
(6)国内投資家主導の買い等が株価上昇を促す
面白いのは「3つの反論」。
(1)さらなる円安進行がなければ利益は成長できない
(2)構造改革はほとんど進展していない
(3)日本の投資家は今も日本株に無関心である

利益成長に一段の円安は必要ない
GDPを上場企業の収益の代理とみなすべきでない
ドル円120円~125円、実質GDp成長率は1.5%見通しだが
2018年まで累計32%のEPS成長を見込んでいる
改革は進展(スチュワードシップコードとコーポレートガバナンスコード)など。
株主還元は過去最高
法人実効成立は低下
日本の女性の就業率は65%でアメリカの63%を超えた
訪日外国人は増加
マイナンバーの導入により課税基盤の拡大と徴税の効率性向上が見込まれる
TPPの進展で輸出品は2倍以上に増加の可能性
コーポレートガバナンス・税制改革・ウーマノミクス・インバウンド観光・貿易自由化
農業改革・外国人の就労機会拡大・電力規制緩和の各分野で具体的な成果があがっている
日本株の主な買い手は2014年から国内勢に移行
事法、信託、日銀が買い越してきた
事業法人による自社株買いは2015年度5.9兆円、2016年度7.5兆円
GPIFと3共済からは最終的に約5兆円の資金が株式市場に流入する可能性
日銀のETF年間3兆円買いは継続方向
投信への資金流入やNISA拡大で個人資金流入

そして「2016年の注目テーマ」
(1)景気敏感株ではインダストリアルよりも消費関連
(2)ヘルスケア:再生医療
(3)M&A
(4)インバウンド観光
(5)小型株
(6)ウーマノミクス

GSは米株よりも日本株に強気な様子が見て取れようか。

市場ではフィンテックという言葉が増大してきた。
フィンテック革命とも言われる。
スマートフォンやビッグデータなどの技術を使った便利な金融サービスで個人の生活や会社の取引慣行が変化していく未来を模索している。
このフィンテックとは「金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた米国発の造語」。
フィンテックで先行する米国では、決済、送金、不正監視、口座管理などで新しいサービスが続々と登場。
人工知能が資産運用に関して助言するサービスまであるという。
その意味で金融はビッグデータを基に大きく変貌する可能性があると考えたいところ。
これも2016年のテーマの一つになる。

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櫻井英明

Author:櫻井英明
日興証券での機関投資家の運用トレーダー、「株式新聞Weekly編集長」などを経て、2008年7月からストックウェザー「兜町カタリスト」編集長。幅広い情報チャネルとマーケット分析、最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評があり、個人投資家からの人気も高い。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの公式スマホサイトにて、毎日、株式情報を配信中。

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